全国約40の銀行が、ブロックチェーン上で発行・管理される「トークン化預金」を活用した相互送金の実証実験に参加することが明らかになりました。日本経済新聞が2026年8月25日に報じたところによりますと、この実証はGMOあおぞらネット銀行aが中心となり、ディーカレットDCP、アビームコンサルティングと共同で、2026年8月中にも開始される計画です。この取り組みは、既存の全国銀行データ通信システム(全銀システム)を介さずに、24時間365日、低コストで即時決済を可能にする新たな金融インフラの構築を目指すもので、日本のデジタル通貨競争に大きな一石を投じるものとして注目されています。
トークン化預金とは?実証実験の概要と参加銀行
トークン化預金とは、銀行預金をブロックチェーン技術を使ってデジタルトークン化したものです。このトークンは、従来の預金と同じく銀行の債務として扱われますが、ブロックチェーン上で直接送金・決済できるため、全銀システムのような中央集権的なネットワークを経由する必要がありません。実証実験では、参加銀行間でこのトークン化預金を相互に送金し、その実用性と安全性を検証します。
参加銀行は、GMOあおぞらネット銀行をはじめ、りそな銀行、商工組合中央金庫、横浜銀行など、全国約40行に上ります。これらの銀行は、オブザーバーとして参加するケースも含み、実証の結果を基に、将来の本格導入に向けた技術的・制度的な課題を洗い出します。
なぜ今、トークン化預金なのか?既存システムの限界
現在の日本の銀行間送金は、全銀システムを中核として運用されています。このシステムは非常に信頼性が高い反面、稼働時間が限られており、夜間や休日は即時決済ができません。また、送金には手数料がかかり、特に大口取引や国際送金ではコスト面での課題が指摘されています。トークン化預金は、ブロックチェーンの特性を活かすことで、こうした制約を根本的に解消する可能性を秘めています。
さらに、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の議論が世界的に加速する中で、民間銀行が主導する決済基盤の重要性も増しています。今回の実証は、日本における民間発行のデジタル通貨の実現可能性を探る重要な一歩と位置づけられます。
進行する国際競争—英国・中国の動向
トークン化預金やデジタル通貨を巡る動きは、日本だけのものではありません。英国では、イングランド銀行(BOE)が「デジタルポンド(Britcoin)」の検討を進める一方で、民間銀行によるトークン化預金の実証実験も活発化しています。中国では、デジタル人民元(e-CNY)の実用化が既に進んでおり、小売決済から国境を越えた送金まで、その適用範囲を急速に拡大しています。
日本の今回の実証実験は、こうした国際的なデジタル通貨競争において、後れを取らないための重要な戦略的意味合いを持っています。特に、全銀システムに依存しない新たな決済ネットワークの構築は、日本発の技術として世界に発信できる可能性もはらんでいます。
実証実験の具体的なスケジュールと技術的課題
実証実験は2026年8月中に開始され、複数のフェーズに分けて実施される見通しです。初期段階では、参加銀行間でのトークン発行と送金の基本動作を確認します。その後、セキュリティやプライバシー保護、法規制への適合性など、より実践的な課題に取り組むとされています。
技術的には、ブロックチェーンのスケーラビリティ(処理能力)や、異なるシステム間での相互運用性が大きな課題となります。GMOあおぞらネット銀行とディーカレットDCPは、独自の技術スタックを持つ企業であり、今回の実証でこれらの課題をどの程度克服できるかが注目されます。
私たちの生活と金融システムに与えるインパクト
トークン化預金が実用化されれば、私たちの金融生活は大きく変わります。まず、銀行口座間の送金が時間帯を問わず、ほぼリアルタイムかつ低コストで行えるようになります。企業にとっては、資金管理の効率化やキャッシュフローの改善が期待されます。また、決済の透明性が高まることで、不正取引の防止や、新しい金融サービスの創出にもつながる可能性があります。
一方で、ブロックチェーン技術の導入には、セキュリティリスクやシステム障害への対応、そして法規制の整備など、乗り越えるべき壁も少なくありません。今回の実証実験は、こうした課題を解決し、安全で信頼性の高い次世代決済システムの基盤を築くための、最初の重要なステップと言えるでしょう。