米財務省が8月19日に発表した残存10〜20年および20〜30年の国債を対象とする流動性支援型の買い戻し(バイバック)について、1回あたりの上限を20億ドルから「少なくとも40億ドル」へ引き上げる措置は、11月4日で期限を迎える。この増額は恒久措置ではなく、今四半期の残り期間に限定されており、ビットコインの8月における約25%の月間上昇を支えた材料の一つとされるだけに、市場関係者の間で今後の動向に注目が集まっている。
米国債バイバック増額の詳細——期限付きという前提条件
米財務省が発表したバイバック増額は、残存期間10〜20年および20〜30年の国債を対象とし、1回あたりの買い戻し上限を従来の20億ドルから「少なくとも40億ドル」に引き上げるものだ。発表当日、30年債利回りは9ベーシスポイント低下して5.196%で引け、10年債は4.647%となった。前日には30年債が2007年4月以来の高水準に達していた局面であり、この発表は長期金利の急上昇を一時的に和らげる効果をもたらした。
しかし、重要なのはこの措置が恒久措置ではないという点である。財務省は上限引き上げの適用を今四半期の残り、すなわち11月4日までと明示しており、その後の規模については同日の四半期定例入札計画で改めて示すとしている。市場を支えたとされる材料には、あらかじめ失効日が設定されているのだ。
また、規模の比較も欠かせない。1回40億ドルという枠に対し、7〜9月期の民間保有分の市中純調達額は7,390億ドル、10〜12月期は6,280億ドルが見込まれている。バイバックは財務省が手元資金で既発債を買い戻し、新発債で置き換える負債構成の組み替えであり、中央銀行が準備預金を創出する量的緩和とは性質が異なる。市場機能の改善には効いても、債務の総量は減らないという構造的な限界がある。
ビットコイン上昇との関連性——8月の急騰を支えた要因
ビットコインは8月に月間で約25%上昇し、2021年以来となる8月のプラスを記録した。この上昇局面を支えた材料の一つに、米国債バイバック増額の発表が挙げられている。長期金利の低下圧力がリスク資産であるビットコインにとって追い風となったとの見方だ。
ただし、30年債利回りは9月2日には5.27%付近へ戻っており、告知そのものが長期金利の水準を恒久的に切り下げたわけではない。バイバック増額の効果はあくまで一時的であり、市場はすでにその反動を織り込み始めている。
9月FOMCと重なる政策カレンダー——非対称な日程が示すリスク
金融政策面では、7月28〜29日のFOMCで政策金利を3.50〜3.75%に据え置いたものの、採決は9対3と分裂した。反対したのはクリーブランド連銀のハマック、ミネアポリス連銀のカシュカリ、ダラス連銀のローガンの3総裁で、いずれも0.25%の利上げを主張している。タカ派姿勢が根強いことを示す結果だ。
9月のビットコインは、支えとなった財政側の措置が11月4日で切れる一方、金融政策側の引き締めバイアスが四半期見通しとともに更新されるという、非対称な日程に向き合うことになる。バイバック増額の期限が迫る中で、FOMCの結果次第ではビットコインにとって厳しい環境が訪れる可能性がある。
注目すべき今後の材料——9月11日の消費者物価指数と9月中旬FOMC
9月11日に発表される消費者物価指数(CPI)と、9月中旬に開催されるFOMCが、この二つの力の綱引きを測る最初の材料となる。CPIの結果次第で金融政策の見通しが変わり、ビットコインを含むリスク資産の方向性が定まる可能性が高い。
特に、バイバック増額の期限が11月4日に設定されていることを踏まえると、9月から10月にかけての市場の動きは非常に重要だ。財政的な支援が薄れる中で、金融政策のスタンスがどの程度引き締め方向に傾くのかが、ビットコインの年末に向けた値動きを左右するだろう。
市場参加者は、バイバック増額の期限切れがもたらす流動性の変化と、FOMCでの金利見通しの更新という二つのリスクを同時に評価する必要に迫られている。