『リングにかけろ』『聖闘士星矢』などで知られる漫画家・車田正美氏が代表を務める3社で、元役員で車田氏の元マネージャーでもあった人物がほかの複数名と共に約46億円を横領していたとして、3社が東京地方裁判所に損害賠償を求める訴訟を起こしました。車田氏は水曜日に都内で記者会見を開き、事実を明らかにしました。
著作権管理会社「車田プロダクション」を含む3社は同日、東京地裁に提訴。訴状では、すでに回収済みの約18億円を除く約28億8000万円の損害賠償を求めています。
車田氏は会見で「発覚した時は信じられなかった。私利私欲のために、寄せられた信頼をためらうことなく裏切る人がいるのだと思うと、無力感と悔しさでいっぱいだ」と心境を語りました。
- 横領総額:約46億円
- 回収済み:約18億円
- 損害賠償請求額:約28億8000万円
- 不正の時期:2018年〜2024年
- 提訴先:東京地方裁判所
経理と対外交渉を掌握した元役員、2018年から不正な資金移動か
元役員は3社の経理業務と対外交渉を担当。2018年から2024年にかけて、3社の資金を無断で自身が支配する複数の会社の口座へ移していたほか、取引先に対してはライセンス料をそれらの口座に振り込ませるよう手配していたとされています。
さらに、取引先からの送金を円滑にするため、3社の関連会社を装った別会社を密かに設立し、資金の流れを隠蔽していた疑いが持たれています。原告側は、元役員に加えてほか6人も関与したと主張しています。横領した資金の一部は、暗号資産(仮想通貨)への投資に充てられていたとみられています。
発覚のきっかけは東京国税局の指摘、「車田氏の利益になる」と元役員は説明
不正が発覚したのは2024年2月ごろです。東京国税局から指摘を受けたことが契機となりました。車田氏に問いただされた元役員は、会社の資金が不正に流用された事実を認めた一方で、「車田氏の利益になると思ってやった」と説明しているとされています。
元役員は長年にわたりマネージャーとして車田氏に寄り添い、経理から契約交渉までの実務を一手に担ってきました。車田氏が代表を務める3社では、この人物への依存度が極めて高く、内部チェックが働きにくい状況だったことがうかがえます。
元マネージャーによる約46億円横領事件とは
漫画家・車田正美氏が代表を務める3社で、元役員兼マネージャーが2018年から2024年にかけて約46億円を不正に流出させた事件です。3社は回収済みの約18億円を除く約28億8000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。
6年にわたり見抜かれなかった構造的な理由
今回の事件で最も注目されるのは、約46億円という巨額の不正が、なぜ6年もの間、表面化しなかったのかという点です。
最大の要因は、元役員が経理業務と対外交渉の両方を掌握していたことにあります。契約先や入金状況を把握できる人物が限られていたため、ライセンス料の振込先が変更されていても、ほかのスタッフが違和感を持つ機会がありませんでした。
また、関連会社を装った偽装会社を設立していた点も、発覚を遅らせました。帳簿上は正規の関連会社との取引に見えるため、社内で不審に思われにくかったのです。横領資金の一部が暗号資産への投資に充てられていたことも、資金の追跡を難しくした一因とみられます。
加えて、長年信頼してきたマネージャーに対する「任せきり」の構図がありました。クリエイターが創作活動に専念するため、財務管理や契約業務を近しいスタッフに丸投げするケースは、個人事務所や小規模スタジオでは珍しくありません。今回の事件は、そうした構造が生んだ典型的なガバナンス不全といえます。
今後の焦点は刑事責任と業界の体制見直し
民事訴訟では、約28億8000万円の損害賠償請求が認められるかが争点となります。暗号資産への投資などで散逸した資金をどこまで回収できるかも、重要な論点です。
さらに、元役員の刑事責任を問う動きが出る可能性もあります。業務上横領罪に問われるケースでは、長期間の不正や隠蔽工作が立件の根拠となります。ほか6人の関与の度合いも、今後の審理の中で明らかになる見通しです。
一方で、マンガ・アニメ業界にとっては、財務管理体制の見直しを迫る事件となりました。版権収入という安定したキャッシュフローを抱えながら、管理を一部の人間に依存しているケースは少なくありません。税理士や弁護士など第三者の視点を取り入れたチェック体制の構築が、今後の課題として浮上しています。
『聖闘士星矢』はアニメ化を経て、いまも世界中にファンを持つシリーズです。ブランド価値を守る意味でも、事件の全容解明と再発防止策の提示が、車田氏と関係会社には求められます。