シンガポール国籍の22歳、マローン・ラム被告が、仮想通貨窃盗・資金洗浄グループの主導者として米ワシントンの裁判所でRICO(威力脅迫及び腐敗組織対策)法違反の共謀罪を認めた。検察は、同組織が全体で2億4500万ドル(約380億円)超の仮想通貨を盗み、洗浄したと主張している。特に注目されたのが、2024年8月18日にワシントンDCの被害者1人から4100BTC(当時の価値で2億3000万ドル超)が盗まれた事件だ。
RICO法違反の共謀罪を認めた22歳のシンガポール人被告
ラム被告は、ソーシャルエンジニアリングや住居侵入を駆使して仮想通貨保有者の情報を入手し、ウォレットから資金を抜き取る国際的な犯罪組織を編成した。活動期間は少なくとも2023年10月から2025年5月まで及んだ。カリフォルニア、ニューヨーク、フロリダなど全米各地と海外の参加者が関与しており、その関係はオンラインゲーム上で構築され、次第に大規模な犯罪組織へと発展したという。
検察によれば、グループの総被害額は2億4500万ドル超。この規模は、仮想通貨関連の組織的犯罪としては近年でも最大級のものとされる。
4100BTC流出事件の手口——Googleサポートを装ったソーシャルエンジニアリング
本事件が広く知られる契機となったのは、ワシントンDCの被害者から約4100BTCが盗まれた一件だ。犯行当日の2024年8月18日時点で、その価値は2億3000万ドルを超えていた。
実行役はGoogleやGeminiのサポート担当者を装い、被害者の信頼を獲得。その上で端末に遠隔接続し、秘密鍵を把握したとされている。標的を絞り込んだ高度なソーシャルエンジニアリングであり、仮想通貨ユーザーにとっては他人事ではない脅威といえる。
ナイトクラブで1晩50万ドル——荒稼ぎした資金の使途
窃取した資金は、極めて派手な生活費に充てられていた。ラム被告と組織メンバーは、1晩で50万ドル(約7500万円)を使うナイトクラブ通いや、10万〜50万ドル超の高級腕時計、プライベートジェットの利用、さらには最高380万ドル(約5億7000万円)相当の高級車を購入していたとされる。まさに刹那的な浪費の限りを尽くした形だ。
ラム被告は2025年9月、マイアミの借家で逮捕された。現在、次回期日は12月8日に設定されているが、これは量刑手続きではなく、処分の時期は未定のまま推移する見通しである。
オンラインゲーム発の犯罪ネットワーク——その拡大プロセス
捜査当局の関係者によれば、組織のメンバーは当初オンラインゲーム上のコミュニティで知り合い、信頼関係を築いていったという。いわゆる「ゲーム内フレンド」が、やがて実社会での犯罪組織へと変貌を遂げたプロセスは、デジタル空間の人間関係が持つリスクの新たな側面を浮き彫りにしている。
本事件は、仮想通貨セキュリティの脆弱性だけでなく、オンラインゲーム上での人的ネットワークが犯罪に悪用される可能性を改めて社会に問いかけるものとなった。
今後の刑事手続きと業界への影響
ラム被告がRICO法違反の共謀罪を認めたことで、今後の捜査は他のメンバーへの波及や資金の流れの解明に重点が移るとみられる。仮想通貨取引所やウォレットサービス事業者にとっても、ソーシャルエンジニアリング対策の強化は急務だ。
検察は組織全体での総被害額を2億4500万ドル超と見積もっているが、全容解明にはさらに時間を要する可能性がある。次回期日である12月8日の動向が、今後の展開を左右する一つの節目となるだろう。