Metaは、スマートグラス「Ray-Ban Meta」向けに提供している「会話フォーカス」機能について、無料での利用時間を月間3時間に制限する方針を明らかにした。制限を超えて使用する場合、月額20ドル(約3,200円)のサブスクリプション「Meta One Premium」への加入が必要となる。この変更は、2025年12月にソフトウェアアップデートとして追加されたばかりの新機能に対するもので、ユーザーの間で議論を呼んでいる。
会話フォーカスは、スマートグラスのマイクとAIを活用し、騒がしい環境でも目の前にいる話し手の声を増幅して聞き取りやすくする機能だ。レストランやカフェ、パーティー会場など、雑音の多いシチュエーションでの利便性を高める目的で開発された。Metaの公式ヘルプページaによれば、無料ユーザーは毎月3時間の利用枠が与えられるが、この時間を超えると機能が制限される。なお、利用した時間を確認する手段は用意されておらず、残り時間を翌月に繰り越すこともできない。
会話フォーカス、無料枠は月3時間へ—Meta One Premiumで上限15時間
有料プラン「Meta One Premium」に加入すれば、会話フォーカスの利用上限は月間15時間に拡大される。月額20ドルという価格設定は、スマートグラス本体の価格(日本では税別約5万円から)と比較すると継続的な出費となるが、頻繁にビデオ通話や対面での会話補助を利用するユーザーにとっては検討の余地がある。ヘルプページには「Meta One Plus」という別のプランも記載されているが、このプランでは会話フォーカス機能に関する特典は明記されていない。
この変更の背景には、Metaがスマートグラス事業で収益化を模索している現状がある。Ray-Ban Metaは2023年10月の発売以来、カメラ、スピーカー、AIアシスタントを搭載したウェアラブル端末として一定の成功を収めたが、ハードウェア販売だけでは持続的な収益を見込みにくい。サブスクリプションによる収益源の確保は、今後のサービス拡充を見据えた戦略の一環とみられる。
顔認識問題で揺れるスマートグラス事業
今回の会話フォーカス制限の発表は、Metaがスマートグラスを巡るプライバシー問題で批判にさらされている最中に行われた。2025年6月上旬、米メディアWiredは、Metaが「Meta AIaa」アプリにスマートグラス向けの顔認識コードを追加していたと報じた。このコードは実際には有効化されていなかったものの、Metaはその直後に削除し、消費者向けには顔認識機能をリリースしていないと説明した。
さらに、Metaが米政府や捜査機関向けに顔認識ツールを提供する企業「Rank One Computing」からソフトウェアライセンスを取得していたことも明らかになり、プライバシー保護の観点から批判が高まっている。これらの一連の出来事は、スマートグラスという常時装着型デバイスが持つプライバシーリスクへの社会的関心を改めて浮き彫りにした。
スマートグラス市場の現状と展望
会話フォーカスは、スマートグラスの実用性を高める重要な機能の一つである。補聴器に近い役割を果たすこの機能は、特に高齢者や聴覚に不安を持つユーザーにとって有用だ。しかし、無料枠が3時間に制限されることで、日常的な利用においては障壁となる可能性が高い。一方で、月額20ドルという価格が適正かどうかは、今後のユーザーの反応次第と言える。
日本市場において、スマートグラスはまだニッチな存在だが、Xreal(旧Nreal)やRokidなどの競合メーカーが次々と新製品を投入しており、競争は激化している。Metaのようにサブスクリプションモデルを採用する動きは、業界全体のビジネスモデルに影響を与える可能性がある。
今後の焦点は、会話フォーカスのような機能がユーザーの生活にどの程度浸透するか、そしてサブスクリプションによる収益化がスマートグラス市場の成長を促進するかどうかにある。Metaは、プライバシー問題への対応と並行して、ユーザーにとって魅力的な機能と価格設定のバランスを模索することになるだろう。