3Dプリンター住宅のセレンディクス、防爆シェルターで防衛分野に本格参入

セレンディクスが防爆シェルターの実証実験を公開し、防衛分野への本格参入を発表。最新技術の可能性を探る。

投稿者 central
セレンディクスが3Dプリンター技術を活用した防爆シェルターの開発実験を公開し、防衛分野への応用を推進。
ハイライト
  • セレンディクスは7月8日、3Dプリンター造形構造体への飛翔体衝突実験を実施し、映像を公開した。
  • 実験の結果、壁の多層構造やリブ状補強材、特殊素材処理の組み合わせが耐衝撃性を向上させることが確認された。
  • セレンディクスは7月20日から英国で開催されるファーンボロー国際航空ショーに防衛装備庁ブース内に出展予定。

セレンディクスは7月8日、建設用3Dプリンターで造形した構造体に金属製の飛翔体を高速で衝突させる実験を実施し、その映像を公開した。同社は3Dプリンター住宅「serendix」シリーズで知られるが、今回の実証実験は、防衛・防災分野という新たな領域への本格的な進出を強く印象づけるものとなった。実験の対象は複数の独自設計構造体と特殊な表面処理を施した素材であり、構造の形状や処理方法の違いが耐衝撃性能に与える影響を比較した。その結果、耐久性に明確な差が確認され、高い防護性能が求められる構造物の研究開発に向けた重要なデータが取得された。実験はセレンディクスが主体となり、KAPが監修を務めている。

同社はこの成果を、7月20日から24日まで英国で開催される世界最大級の航空宇宙・防衛展示会「Farnborough International Airshow 2026」にて発表する。防衛装備庁ブース内に出展し、3Dコンクリートプリンティング製の「防爆シェルター」や「ドローン基地」を展示する予定だ。同ブースは、防衛装備庁が官民一体で日本の装備品の技術力を世界に発信することを目的としており、セレンディクスの技術がその中核を担うことになる。

3Dプリンター建築だから実現できる「防爆シェルター」の設計思想

従来の鉄筋コンクリート建築と比較した場合、3Dプリンター建築の最大のアドバンテージは、曲面や複雑な形状を自由に、かつ低コストで造形できる点にある。セレンディクスはこの特性を最大限に活用し、用途に応じて壁の数や内部構造を最適化する製造方法について特許を出願している。今回の実験でその有効性が示されたのは、二重・三重の壁による多層構造や、リブ状の補強材の配置、そして特殊な素材処理を組み合わせるアプローチである。これらを組み合わせることで、爆風や高速飛翔体のエネルギーを効果的に分散・吸収し、耐衝撃性を飛躍的に高めた構造物を開発できるという。

Co-founder兼CTOの飯田國大氏は、今回の結果について「防爆シェルターやドローン基地、公共インフラ、災害対応施設、復興住宅など、住宅分野にとどまらない3Dプリンター建築の可能性を広げるうえで、大変有意義な知見となりました」とコメント。さらに、破損箇所のデータを迅速に取得し、該当する部材のみを再製造するという3Dプリンターならではの特性を生かせば、災害時や有事における迅速な復旧・再建にも応用が可能だとしている。

防衛省もスタートアップとの連携に本腰

この流れは、官民の枠を超えた動きと同期している。小泉防衛大臣は7月1日、京都で行われた国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2026」に登壇した。これは防衛大臣がスタートアップイベントに出席した初めてのケースであり、防衛分野における先端技術の開発でスタートアップとの連携を積極的に進める姿勢を鮮明にした。セレンディクスのような建設系スタートアップが持つユニークな製造技術は、従来の防衛産業のサプライチェーンとは異なる新たな価値を提供する可能性を秘めている。

復興支援から防衛へ——技術の横展開が示す未来

セレンディクスは日本初の3Dプリンター住宅メーカーとして、2022年3月に「serendix10」を建築。2024年9月には2人世帯向け住宅「serendix50」の販売第1号棟を、復興住宅モデルとして石川県珠洲市に納入している。さらに、現地企業との連携により、ウクライナにおける3Dプリンター建築による復興支援プロジェクトも進行中だ。これらの実績は、同社の技術が平時の住宅供給から災害復興、そして国家安全保障という極限の領域にまで応用可能であることを示している。

3Dプリンターによるコンクリート造形技術は、製造の自動化、工期短縮、人件費削減といったメリットに加え、設計の自由度が極めて高い。今回の防爆シェルターへの応用は、その技術の汎用性を証明するものであり、3Dプリンター建築業界全体にとって大きな転換点となる可能性がある。今後、セレンディクスがどのような製品ラインナップで防衛市場を開拓し、他のスタートアップやゼネコンとの競争・協業がどのように進むのか。その動向は、日本の建設産業と安全保障の未来を占う重要な指標となるだろう。

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