ミャンマーのWai Khin Hnin(ワイ・キン・ニン)選手が、名古屋で開催中のアジア大会において、新競技「テクボール」女子シングルスで初代金メダリストに輝いた。決勝ではインドネシアのスマヤ選手(単名)を2-1(10-12、12-8、12-9)で下し、ミャンマーにアジア大会テクボール初の金メダルをもたらしている。
この歴史的な瞬間を、バルセロナおよびスペイン代表のレジェンドであるカルレス・プジョル氏が会場で見守ったことも話題を集めた。プジョル氏はテクボールの国際的な普及を支援するアンバサダー的な存在として知られ、決勝戦の熱戦を間近で観戦した。
初セット落とすも逆転勝利——Wai Khin Hninの強さ
決勝戦、Wai Khin Hninは第1セットを10-12で落とし、苦しい立ち上がりとなった。しかし第2セット以降、冷静さと技術力を発揮。12-8でセットを奪い返すと、最終第3セットも12-9で制し、逆転勝利で金メダルを確定させた。
試合後、Wai Khin Hninは「本当にうれしい。私を信じてシングルスに選んでくれたヘッドコーチに感謝している。自分ならできると信じていた」と涙ながらに語った。さらに「次の目標は、2027年の東南アジア競技大会(SEA Games)でもミャンマーに金メダルを持ち帰ること」と、早くも未来への決意を示した。
テクボールとは——ハンガリー発祥の新感覚競技
テクボールは、サッカーと卓球を融合させたようなユニークな競技で、14年前にハンガリーのガレージで考案された。湾曲したテーブルを挟んで、足や頭、胸を使ってボールを打ち合うスタイルが特徴で、東南アジアの伝統競技「セパタクロー」の要素も色濃く反映されている。
その競技性と観戦のしやすさから急速に普及。2023年にはヨーロッパ競技大会(European Games)で正式採用され、今回の名古屋アジア大会でアジアの舞台に初めて登場した。日本国内でも競技人口は徐々に拡大しており、今後のさらなる認知度向上が期待される。
多彩な顔ぶれ——14歳のフィリピン代表から40歳の日本代表まで
今大会のテクボール競技には、実に多様な背景を持つ選手たちが集まったことが大きな話題となっている。フィリピン男子チームには14歳の選手が3人も名を連ね、そのうちの1人、プリンス・アグスティン選手はシングルス銅メダルマッチに出場。10代の若き才能がアジアの舞台で躍動した。
一方、日本から出場した野曠拓也(のどみ たかひろ)選手は、なんと現役のお笑い芸人。「高校まではサッカーをやっていたが一度諦め、30代後半でテクボールを始め、40歳でこの大きな舞台に立てた。『年寄りでも頑張れる』というメッセージが伝わったなら、オヤジパワーを出せたかなと思う」とユーモアを交えてコメントした。
さらに44歳のインドネシア代表フスニ・ウバ選手は、セパタクローの選手として過去4大会連続でアジア大会に出場してきたベテラン。「2018年アジア大会でセパタクローの競技を終えた後、まさか再びアジア大会に戻ってくるとは思わなかった。特にテクボールで出場できるとは」と語り、新旧競技の架け橋とも言える存在感を示した。
アジア大会での初代王者——競技の未来を照らす
名古屋アジア大会で初めて実施されたテクボール。その初代金メダリストに輝いたWai Khin Hninの偉業は、母国ミャンマーのみならず、アジア全域におけるテクボール普及の象徴的な出来事となるだろう。若手からベテランまで、多様なバックグラウンドを持つ選手たちが一堂に会したこの大会は、競技の持つ可能性と包容性を強く印象づけた。
今後のテクボールは、2027年SEA Gamesでのミャンマー代表の挑戦、さらには2030年のアジア大会やその先の国際舞台へとつながっていく。今回の名古屋での熱戦は、その第一歩として間違いなく記憶される。