# 米国寿司市場に「飽和」—スシロー、NY旗艦店の挑戦
日本の回転ずしチェーン最大手「スシロー」が、ニューヨーク・タイムズスクエア近くに米国旗艦店を2025年10月にオープンする。低価格で本格的な寿司を提供する「大衆モデル」を武器に、すでに飽和状態にある米国の寿司市場に参入する。高級店からスーパーの総菜、スタジアムの軽食まで、あらゆる選択肢がそろう市場で、どこまで存在感を示せるのか。競争は一段と激しくなりそうだ。
## 「飽和」した寿司市場
米国で寿司は、もはやエキゾチックな食べ物ではない。ミシュラン星を獲得する高級店が並ぶ一方、コンビニやスーパーの総菜コーナーには手頃な価格の寿司が並ぶ。野球場の売店で、ビールと一緒に寿司を楽しむ風景も珍しくない。「おしゃれな」イメージから「日常的な」イメージへと変化し、市場は十分に成熟している。
## 大衆モデルの可能性
その点で、スシローが持ち込む「回転ずし」のスタイルは、既存の市場に新しい軸を生み出す可能性を秘めている。タッチパネルによる注文と、レーンに流れる寿司による効率的な提供システムは、人件費の高騰という課題を抱える現地の飲食業界にとって、一つの解決策になり得る。価格を抑えながら一定の品質を保つことは難しいが、チェーンストアの規模を生かした大量仕入れやローコスト経営で切り崩す戦略だ。
## アジア勢とのしのぎ合い
ニューヨークの外食市場では、日本のみならずアジア各国のチェーンがしのぎを削る。寿司はもはや日本だけのものではなく、世界中に広がったことを象徴する市場である。各国のチェーンと競合する中で、スシローの強みは「本場の味」を守りつつ、大衆化を徹底してきた点にある。
## 海外市場にかける理由
スシローが海外市場をにらむ背景には、国内市場の縮小がある。人口減少で外食産業のパイが細る日本では、成長戦略の中心が海外にシフトしている。同社はアジア諸国で蓄積したノウハウを生かし、ゼンショーホールディングスの資本力を後ろ盾に、ニューヨークを次の成長市場と位置づける。
## ニューヨークの壁
しかし、挑戦には高い壁が立ちはだかる。指摘されるのは、何よりニューヨークの不動産価格と人件費の高さだ。日本と同じ価格設定では採算が取れず、「現地の」価格水準に合わせたメニュー構成が求められる。また、現地の消費者の味覚に合わせたアレンジも必要になるだろう。
加えて、ニューヨークは一年中多くの観光客が訪れる一方で、地元の常連客の取り込みも重要だ。観光需要に柱を置くのか、リピーターを増やすのか。ビジネスモデルの設計次第で、店の将来が左右される。
## 結び
「飽和」市場への参入は、誰にでもできる挑戦ではない。しかし、世界の外食産業を熱くさせる日本の大衆回転ずしモデルが、ニューヨークでどう評価されるのか。タイムズスクエアという舞台で繰り広げられる戦いの行方は、日本食の国際展開を占うひとつのバロメーターになるだろう。