与那国島——台湾との直線距離がわずか110キロメートルに位置する、日本の最前線。この戦略的要衝に、米軍が新型対艦ミサイルシステム「NMESIS(Navy-Marine Expeditionary Ship Interdiction System)」を初めて展開する計画であることが明らかになった。日米共同演習「キーン・ソード」の一環として今月下旬に実施されるこの動きは、東アジアの安全保障環境に新たな緊張をもたらす可能性をはらんでいる。
NMESISとは何か——射程約185キロの新たな抑止力
NMESISは、海軍と海兵隊が共同で開発した先進的な艦船妨害システムである。その射程は約115マイル(約185キロメートル)に達し、台湾周辺の海域を航行する艦船をその圏内に捉える能力を持つ。今回のキーン・ソード演習では、このシステムが与那国島に据え付けられる形で展開される。同時に、陸上自衛隊も独自の対艦ミサイルシステムおよび地対空ミサイルシステムを同島に投入する予定である。
与那国島へのミサイルシステム展開は、昨年の演習からの明確な拡張を示している。2023年のキーン・ソードでは、米軍は与那国島への補給物資輸送訓練を実施し、地域危機に備えた前方作戦基地の構築をシミュレーションしていた。今年はそこからさらに踏み込み、実戦的な火力配備へと移行する。
「キーン・ソード」演習——実戦想定が加速する日米協力
キーン・ソードは2年に1度実施される日米合同軍事演習であり、2024年は10月19日から29日までの日程で、日本の南西諸島全域を舞台に行われる。台湾を巡る中国の行動を想定し、日米両国は訓練のリアリティを一段と引き上げている。電子戦車両を含む各種装備が投入される予定であり、与那国島へのミサイルシステム展開は、作戦即応性を検証する核心的な要素と位置づけられている。
台湾海峡での偶発的な衝突が現実味を帯びる中、キーン・ソードは単なる訓練の枠を超え、実戦に直結した準備作業としての性格を強めている。
中国はどのように反応したか
中国外務省報道官は昨年、日本が2030年から与那国島に地対空ミサイルを恒常的に配備する計画に対し、「地域の緊張を生み出し、軍事的対立を引き起こす」と強く非難している。また、中国国営メディアは、米軍が昨年フィリピンにNMESISを送った動きについても批判を展開した。
今回の与那国島への展開は、中国が最も警戒する「台湾への直接的な軍事的圧力」と受け止められる可能性が高い。与那国島に配備されたミサイルが実戦投入されるシナリオは、中国軍の行動を大きく制約する要因となり得るだけに、北京の反発はより一層激しさを増すとみられる。
米軍資産の枯渇と日米同盟の強化という逆説
こうした軍事強化の裏側で、米軍のアジア太平洋地域における資産は中東への展開により減少している。通常は日本に配備されている空母「ジョージ・ワシントン」を含む戦力が、イランを標的とした作戦に投入されているためだ。限られたリソースの中で、いかに抑止力を維持するか——今回のNMESIS展開は、その答えの一つとも言える。
ニューヨークで行われたトランプ大統領と高市早苗首相の首脳会談では、日米同盟の揺るぎない強さが改めて確認された。一方で、高市首相は昨年、台湾防衛のための集団的自衛権の行使に言及した発言を撤回するよう中国から圧力を受けており、同盟強化と対中関係のバランスが今後ますます重要な政策課題となる。
与那国島へのNMESIS展開計画は、日本の安全保障のターニングポイントを示す象徴的な出来事である。それは、台湾海峡を巡る地政学的リスクの高まりを如実に反映すると同時に、日米同盟が新たな段階へと移行していることを如実に物語っている。