2026年度、日本の中小企業における正社員の賃上げ率が平均4.29%、金額にして1万2036円の増加に達したことが、日本商工会議所a(JCCI)の調査で明らかになった。この上昇率は前年度の4.03%を上回るものであり、継続的な物価高騰を背景に、人手確保に向けた企業の努力が如実に反映された形だ。
中小企業の賃上げ率、前年比0.26ポイント増の4.29%
日本商工会議所が5月に発表した調査結果によると、2026年4月時点で中小企業の正社員の月額賃金は前年同月比4.29%増加し、その額は平均1万2036円に上る。昨年の同時期と比較して0.26ポイントの拡大を示しており、従業員の生活を支えると同時に、人材流出を防ぐための賃金引き上げが中小企業の間でも定着しつつある実態が浮かび上がった。
また、同じ4月の数値を3月と比較した場合の上昇率は4.01%となっている。この指標は、中小企業が今春に実施したベースアップや定期昇給の実勢を示すものとして注目される。一方で、大企業の賃上げ率は日本経済団体連合会(経団連)の集計により5.46%に達しており、企業規模による格差は依然として大きい。
労使交渉の動向:70%超が賃上げ実施、2割は「未定」
調査対象となった中小企業2260社のうち、労働組合を有する企業はわずか218社にとどまる。こうした非組合企業が大半を占める環境下にあっても、2026年度に賃上げを「実施した」または「実施する予定」と回答した企業は全体の70%を超えた。これは、中小企業が労使交渉の枠組みに依存せずとも、自主的に賃金改定に踏み切らざるを得ない状況にあることを示している。
ただし、依然として約20%の企業が「未定」と回答している。これらの企業の間では、原材料価格の高騰や、中東情勢の長期化に伴う供給網の混乱に対する強い懸念が表明されているという。「賃上げをしたくても、先行きのコストが見通せない」という声は少なくなく、物価上昇と賃金上昇のバランスを見極める難しさが浮き彫りとなった。
中小企業における賃上げの主な障壁
調査結果からは、賃上げ実施の障壁として、以下の要因が浮かび上がっている。
- 原材料価格の高騰:製造業や建設業を中心に、仕入れコストの上昇が収益を圧迫している。
- 中東情勢の悪化:地政学的リスクから、一部の資材調達に遅延や価格高騰が生じている。
- 人手不足の深刻化:賃金を上げても採用が追いつかないケースが多く、コスト増加分が売上に反映されにくい。
約1万2036円の増額が意味するもの
中小企業における月額1万2036円という賃上げ額は、単なる数字以上の意味を持つ。物価高が家計を直撃するなか、この金額は食料品や光熱費の上昇分を相殺するには十分ではない可能性がある。しかし、中小企業の多くが価格転嫁に苦しむ状況を考慮すれば、この賃上げ率は経営者の「従業員を守りたい」という強い意志の表れとも捉えられる。
さらに、賃上げのタイミングについては、4月に集中する一方で、夏場や秋口に改定を行う企業も少なくない。日本商工会議所の担当者は、「年度を通じて賃金の底上げが図られる傾向にある」と指摘しており、年間を通じた賃金改定の動きが徐々に広がりを見せている。
大企業との格差是正は道半ば
大企業の平均賃上げ率5.46%と比較すると、中小企業の4.29%は依然として約1.2ポイントの開きがある。金額ベースではさらに差が広がる可能性が高く、「人手不足の中でも賃金で大企業と競争できない」という中小企業のジレンマは解消されていない。政府が進める価格転嫁の円滑化や生産性向上支援策の効果が、実際に中小企業の賃金原資として機能するかどうかが今後の焦点となるだろう。
本調査は2026年4月から5月にかけて実施され、全国の中小企業2260社から有効回答を得ている。今回の結果は、日本の雇用の大部分を支える中小企業セクターが、マクロ経済の重圧の中でいかにして「人への投資」を継続しているかを示す貴重なデータといえる。