日本株市場が、2023年終盤にみられた相場展開と類似した局面に入りつつあるとの見方が浮上している。日経平均株価が節目の3万8000円台で足踏みを続けるなか、投資家の間では「2023年11月から12月にかけての膠着感を想起させる」との声が聞かれる。当時は米国の利上げ打ち止め期待が高まりながらも、実際の金融政策の転換を確認するまで方向感を欠いた時期だった。現在の市場もまた、日銀の追加利上げの有無や米国の景気減速リスクといった不確実要素を抱え、同じような値動きパターンを描いている。
日経平均の推移にみる類似性
2023年の日本株市場を振り返ると、年末にかけて日経平均は3万3000円前後で推移し、12月半ばにかけて小幅な上昇をみせたものの、大きな方向性を打ち出せないまま越年した。ところが2024年に入ると、半導体関連株を中心とした買いと、東証の市場改革への期待感が相まって急上昇。2月にはバブル崩壊後の最高値を更新するに至った。
現在の日経平均は、2024年夏場の急落から回復した後、3万8000円から3万9000円のレンジで推移している。この値動きは、2023年における3万2000円から3万3000円のボックス相場と極めて形状が似ている。チャート上に両期間を重ね合わせると、上昇局面の角度や調整局面での底堅さに共通点が認められるとの分析が、複数の市場関係者から出ている。
バリュエーション面での共通点
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったバリュエーション指標にも、類似性が確認できる。2023年11月時点の東証プライム市場の予想PERは約15倍、PBRは約1.3倍だった。これに対し、2024年10月時点では予想PERが約14.5倍、PBRが約1.4倍と、ほぼ同水準にある。企業業績の拡大が株価の上昇を吸収し、割高感が抑制されている構図だ。
日銀の金融政策も共通項の一つだ。2023年後半は、植田和男日銀総裁が就任後も大規模緩和の維持を続け、市場は出口戦略のタイミングを探る展開が続いた。現在も日銀は追加利上げの時期を巡り様子見姿勢を崩しておらず、市場参加者は12月の金融政策決定会合や2025年初めの動向に注目を集めている。ただ、2023年と大きく異なるのは、すでに2回の利上げが実施され、政策金利が0.25%まで引き上げられている点だ。
相違点をどう見るか
単純なパターンの再現を期待するのは早計だろう。最大の相違点は、企業業績とマクロ経済の位置づけにある。2023年当時は、円安進行を追い風に輸出企業の業績が急改善し、訪日観光需要の復活も日本株の追い風となった。現在は円安の一段の進行が一服し、企業業績の伸び率も鈍化傾向にある。日銀の短観(全国企業短期経済観測調査)でも、大企業製造業の業況判断DIは2023年12月のプラス13から、2024年10月はプラス11へとやや低下している。
海外投資家の動きも異なる。2023年後半は、バフェット効果とも呼ばれる海外マネーの大型流入が相場を押し上げた。ところが2024年入り後は、海外投資家の日本株買い越し額が減少し、特に夏季以降は売り越しに転じる月もみられる。日本の個人投資家による積立投資は堅調だが、相場全体を押し上げる原動力としては不足感が否めない。
年末相場のカギを握る三つの要素
今後の日本株市場の方向性を占う上で、三つの要素が焦点となる。
第一に、米国の金融政策だ。FRB(連邦準備制度理事会)が利下げサイクルに入るかどうかは、世界の資金フローを左右する。年内の追加利下げが見送られた場合、ドル高・円安が再燃し、日本株にとっても不透明要因となる。第二に、日本の政治動向。新政権の経済政策や、2025年度予算編成の行方次第で、内需関連銘柄への見方が変わる可能性がある。第三に、半導体関連銘柄の動向だ。2024年の相場を牽引してきた東京エレクトロンやアドバンテストなどの大型株が、再び上昇モメンタムを取り戻せるかが鍵を握る。
2023年との比較から見える投資戦略
2023年末のボックス相場は、翌2024年にかけての急上昇の準備期間だったと事後的に評価できる。しかし、同じパターンを機械的に当てはめることは危険だ。現在の日本株市場は、グロース株のバリュエーションが2023年当時より割高であり、一方でバリュー株の割安感は薄れつつある。セクター別の選別がより重要になる局面といえる。
投資家にとって参考になるのは、2023年と現在の相場が示す「不確実性の下での値固め」という共通構造だ。方向感が定まらない時期ほど、配当利回りの高い銘柄や自社株買いを積極化する企業に資金が集まる傾向がある。実際、2023年11月から12月にかけては、増配や自社株買いを発表した銘柄が相対的に優位な値動きを示した。足元でも、日本企業の株主還元強化の流れは継続しており、同様の動きが繰り返される可能性がある。
年末にかけての日本株市場は、2023年の再現劇となるのか、それとも新たなシナリオが待っているのか。チャート上の類似性が単なる偶然で終わるかどうかは、企業業績の実態とマクロ環境の変化次第と言える。投資家は過去のパターンに過度に引きずられることなく、一つひとつの経済指標と企業発表に目を凝らす必要があるだろう。