セガは6月21日、東京都品川区のセガ本社にて「ソニック35周年記念公式ファンミーティングツアー in 東京」を開催した。2026年6月23日に35周年を迎える「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を記念し、アジア7地域で展開される本イベントの東京公演では、トークショーやサイン会、そして新作「SONIC PICO PARK」の試遊が行われた。本稿では、会場の熱気、クリエイティブディレクター・星野一幸氏とサウンドディレクター・大谷智哉氏へのインタビュー、さらに新作の試遊レポートとプロデューサー・島津真太郎氏、ディレクター・三宅俊輔氏へのインタビューを詳細にお届けする。
社員食堂がソニック一色に染まった一日
会場となったのは、セガ本社の社員食堂。普段は社員たちが昼食をとる空間が、この日はソニックのフォトパネルやサインボード、ファンから寄せられたイラストで埋め尽くされていた。開演前からテーブルごとに自然とファン同士の交流が生まれ、自慢のグッズコレクションを見せ合う輪ができるなど、和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。
参加者の“装い”にも35年分の愛が凝縮されていた。ソニックのTシャツやジャケットはもちろん、髪をソニックの青に染めた参加者や、シャドウをイメージした黒髪に赤のメッシュを入れた参加者も。東京ゲームショウで配布されたお面を持参するファンもおり、テキサスから駆けつけたという海外からの参加者の姿も見られた。
バースデーコラボメニューとして提供されたのは、ソニックの好物である「チリドッグ」と「オニオンリング」、そして「カオスコーラフロート」の3品。参加者たちはこれらを頬張りながら、乾杯の音頭とともにソニックの誕生日を祝った。同時に実施されたサイン会では、星野氏、大谷智哉氏、そして瀬上純氏が参加者のグッズにサインをしていた。
35年目のソニックが見据える先——星野一幸氏&大谷智哉氏インタビュー
ファンミーティング終了後、シリーズのクリエイティブディレクターを務める星野一幸氏と、サウンドディレクターの大谷智哉氏に合同取材を実施。35年にわたる歩みと今後の展望について語ってもらった。
「自分の人生も振り返るような感慨深さ」——35周年の率直な思い
星野氏は「この35年、ほぼ社会人生活と重なっている。今日のイベントでは90年代から振り返ったが、自分の人生も振り返るような感じで感慨深かった」と述懐。大谷氏は「初めて参加したのは『ソニックアドベンチャー2』で、ソニックの10周年タイトルだった。当時25歳の自分が『自分がやりたいことを提案すべきだ』と書いたコメントの通り、毎回チャレンジを入れていく姿勢を大事にしてきた。その答え合わせができた感じがする」と振り返った。
アジアのファンを可視化する——ファンミーティングの意義
今回のファンミーティングは香港に続く2回目の開催。星野氏は「アジアのソニックファンを可視化するという目的がある。これまでアジアに向けてあまり取り組んでこなかったので、直接現地に行ってローカルな盛り上がり方や気質を見てくることで、その地域に最適化した施策を打てる」と説明。日本のファンについては「かなり成熟度が高く『お行儀がいい』というイメージだったが、今日はその枠を超えて盛り上がってくれた。他のアジアの地域に負けないソニックファンの力が見られた」と手応えを語った。
大谷氏は「日本ではジョイポリスで2012年頃からバースデーイベントをやっており、ある程度ファンは可視化されていた。ただ、最近のファンと昔のファンでは『初めて遊んだゲームタイトル』が変わってきている。新しい世代が入ってきてくれている実感があり、嬉しい」と、ファン層の広がりに言及した。
ゲーム開発がすべての起点——マルチメディア展開の根幹
映画やグッズなど多岐にわたるメディア展開について、星野氏は「映像メディアなら動きの強みがあるなど、各メディアに最適化された表現を常に考えている。とにかくたくさんの人に届く手法で、ソニックを好きな人を増やしたい」と語る。一方で大谷氏は「社長も『ゲーム開発がセガの一丁目一番地』と言っているし、私も全く同じ気持ち。どんなにライブやグッズが売れても、ゲームが微妙だったら全く嬉しくない。ゲーム開発がすべての起点であり、そこで大きな成果を出したい」と強調した。
「ソニックの音楽が新しい地平を開いた」——誇りに思う瞬間
最も誇りに思う出来事として、星野氏は「自分がデザインしたシャドウが映画に登場し、キアヌ・リーブスさんに声を当てていただいた。自分のクリエイションが長く愛され、評価されるのはとても誇らしい」と答えた。大谷氏は「『ソニックフロンティア』のサウンドトラックが3億再生を超え、リード曲がSpotifyだけで5000万再生を超えた。世界的に評価されている日本の音楽アーティストと並ぶ数字になってきて、ゲーム音楽にもまだ上があるんだなという景色が見えた。ずっと継続してきたことが新しい地平を開いてくれた」と語った。
笑いが止まらない協力アクション「SONIC PICO PARK」試遊レポート
会場では、35周年を記念したコラボタイトル「SONIC PICO PARK」の試遊も実施された。本作は協力型アクションパズル「PICO PARK」シリーズの最新作で、ディレクターはPICO PARKの生みの親である三宅俊輔氏が務める。対応プラットフォームはSteam(他は未定)、発売日は未定だ。
筆者はセガのスタッフと2人でプレイ。ゲームはシンプルな横スクロールアクションで、各ステージ右端のゴールプレートに全員でたどり着けばクリアとなる。プレイできたのは全8ステージ。序盤はチュートリアルの色合いが強く、ジャンプやスピンダッシュ、リングを所持していればミスにならないといったソニックならではのシステムを自然に学べる設計だ。テイルスは飛行して他のキャラクターを持ち上げて運ぶことも可能だった。
本作の最大の魅力は、“協力したいのに、お互いが足を引っ張り合ってしまう”という体験にある。プレイヤー同士に当たり判定があるため、相手に押し出されて落下するハプニングが日常茶飯事。意図せずスプリングに触れてはじき出され、巻き添えで両者もろとも落下するシーンも発生した。しかしミスしてもすぐに復活するため、リトライのストレスは一切なく、「お互い様」の空気感が自然と生まれる。仕事であることを忘れて大声を出して笑ってしまうほどだった。
「ソニックらしさ」と「PICO PARKらしさ」の絶妙な融合——島津真太郎氏&三宅俊輔氏インタビュー
試遊後、プロデューサーの島津真太郎氏とディレクターの三宅俊輔氏にインタビュー。両者の思想がどのように融合したのか、その設計思想を聞いた。
「悪意のないハプニング」が笑いを生む構造
「ソニックらしさ」と「PICO PARKらしさ」の両立について、島津氏は「根本的にギミックや遊びは『ソニックらしさ』、ゲームの根源的な面白さは『PICO PARKらしさ』を残すという考え方。PICO PARKって『悪意のないハプニング』が笑いを生む。テイルスがスピンダッシュしてソニックにぶつかって落としてしまった時、『何やってんだよ』『ごめん、ブレーキ間に合わなかった』という会話が生まれる。悪意がないのにやり直しになる、この構造がPICO PARKらしさでもありソニックらしさでもあると気づいた時に『あ、作れる』と思えた」と明かす。
キャラクター固有スキルとレベルデザインの設計思想
キャラクターの固有スキルについて、三宅氏は「今回の試遊8ステージでは、最後のステージはテイルスの飛行を使わないとクリアできない設計にしている。同じパズルでもテイルスを使った別の解き方がある、というバリエーションも考えている。キャラとスキルの組み合わせで複数のクリア方法が生まれるのが理想」と語る。島津氏は「固有スキルが必要な場面では、そのキャラクターに強制的に変わるギミックを用意することを考えている。人数や能力、プレイスキルの違いが自然とクリア方法の多様性につながるようにしている」と補足した。
8人プレイと今後の展開——ピコキャットもスピンダッシュ
2人から8人までの対応について、島津氏は「2人で面白いのと8人で面白いのは全然違う。さらにキャラクター固有スキルも加わるので、相当難易度の高いレベルデザインになる」と難しさを認めつつ、三宅氏は「プレイヤーキャラクターの選択に制限をかけるつもりはない。ソニック・テイルス・ナックルズ・エミーとピコキャットが同じステージを一緒に遊ぶことも可能。すでに公開しているトレーラーにも、ピコキャットがスピンダッシュする映像が入っている」と、ピコキャットもソニックらしい動きをすることを明かした。
登場キャラクターの追加については、島津氏が「セガさんから『35周年なのでできるだけ多くのソニックキャラを出してほしい』と言われている。4キャラで完結とは思っていない。今後、追加情報が出る予定」と述べ、今後の展開に期待を持たせた。
35周年を迎えてもなお、ソニックはゲームを起点に、音楽、映像、そしてファンとの直接的な交流を通じて、その世界を拡大し続けている。今回のファンミーティングは、その根底にある「ポジティブなパワー」を再確認する場となった。新作「SONIC PICO PARK」がもたらす新たな協力体験は、シリーズの未来を象徴する一歩と言えるだろう。