日本市場に上場する大手製造業の時価総額は、この10年で約2倍に増加した。にもかかわらず、多くの投資家が「日本株で儲けにくい」と感じるのはなぜか。その背景には、設備投資額と付加価値額の間に横たわる日本製造業特有の構造的なミスマッチが存在する。本稿では、経済協力開発機構(OECD)のデータベースを基に、日本のモノづくり産業が抱える「投資しても儲からない」仕組みを可視化し、その実態を掘り下げる。
目次
設備投資の割に儲けが伸びない——日本の立ち位置
OECDの統計によれば、日本の製造業における粗資本ストック(設備投資の累積額)は主要先進国の中で突出して高い水準にある。しかし、同じデータで労働者1人当たりの付加価値額を比較すると、日本はドイツやアメリカ、フランスに明確に後れを取っている。つまり、膨大な投資を積み重ねてきたにもかかわらず、その投資が生み出す「儲け」の効率が他国に比べて著しく低いという構図が浮かび上がる。
この現象は、いわゆる「設備過剰」や「儲からない投資の連鎖」として古くから指摘されてきたが、足元のデータでも改善の兆しは見えにくい。特に注目すべきなのは、投資額の増加ペースに対して、付加価値の成長曲線がフラット化している点である。
なぜ日本の製造業は「投資効率」が悪いのか
要因1:減価償却の重しと更新投資の呪縛
日本の製造業は、高度経済成長期からバブル期にかけて導入した生産設備を、長期にわたって使い続ける傾向が強い。当然ながら設備は老朽化し、維持・更新のための投資が毎年のように発生する。この「更新投資」は売上高や利益の増加に直接結びつきにくい。むしろ、企業のキャッシュフローを拘