フランス政府とサウジアラビア政府が、人気漫画『ドラゴンボール』をテーマにした大型遊園地の建設で合意する見通しであることが明らかになった。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相が仏訪問中である6月30日、パリ近郊で両国の戦略的パートナーシップ会合が開かれ、その席上で正式な契約が交わされる運びとなった。関係筋によれば、このプロジェクトはサウジの政府系ファンドが出資する投資会社が主導。パリ北西のクールディマンシュに建設される可能性が高いとされている。
「ディズニーランド級」と明かされた巨額プロジェクト
この計画の全容を一部明らかにしたのは、イル・ド・フランス地域圏(パリ首都圏)のヴァレリー・ペクレス知事だ。同氏はフランスのテレビ局TF1の取材に対し、「本日のエリゼ宮での極めて重要な会合で、この合意が署名される可能性がある。我々はサインを待っている」と述べた。さらにペクレス知事は、この計画が「ディズニーランド規模のプロジェクトだ」と強調。その費用については明言を避けたものの、そのスケール感から投資額は数百億円規模に上るとみられる。
イル・ド・フランス地域圏政府はこの構想に過去18カ月にわたり取り組んできたという。これまで具体化していなかった背景には、用地選定やサウジ側との資金調達スキームの調整など、複雑な交渉が必要だったことがうかがえる。
サウジ皇太子の仏訪問と戦略的連携の舞台裏
ムハンマド皇太子の今回のフランス訪問は2日間の日程で行われている。初日の6月29日には、エマニュエル・マクロン大統領が皇太子をエスポーツワールドカップに招待。業界関係者の間では、このイベントが単なる親善の場ではなく、両国のデジタル・エンターテインメント分野での協力を前面に打ち出すための戦略的な演出だったとの見方が強い。
そして迎えた30日、両首脳は初となる「サウジ・フランス戦略パートナーシップ協議会」を主催。この場で『ドラゴンボール』テーマパークを含む、多岐にわたる経済協定の署名が予定されている。仏大統領府も「いくつかのプロジェクトについてはまだ協議中だが、月曜日にはさまざまなセクターにわたる多くの経済協定が署名される」と認めており、エネルギーや防衛、文化など幅広い分野での合意が期待されている。
日本発IPが欧州で実現する新たなランドマーク
『ドラゴンボール』は、鳥山明氏の原作による世界的な人気を誇る日本の漫画・アニメシリーズだ。このIP(知的財産)を中核としたテーマパークが欧州、それもフランスに誕生することは、日本のコンテンツ産業にとっても極めて象徴的な意味を持つ。近年、サウジアラビアは「ビジョン2030」の下で石油依存からの脱却を図っており、エンターテインメント産業への積極的な投資を加速させている。ゲーム業界では既に数多くの日本企業やタイトルに出資しており、今回のテーマパーク構想もその延長線上にあると捉えられる。
パリ近郊には既にディズニーランド・パリが存在するが、同地域は欧州有数の観光市場である。日本発のコンテンツが、ディズニーやユニバーサル・スタジオといった既存の巨大テーマパークと並び立つ可能性に、業界関係者の関心は高まっている。ただし、着工や開業時期については現時点で未定。用地の買収や環境アセスメント、そして何よりサウジ側の投資ファンドからの資金調達の最終的な承認が、今後の大きな焦点となる。
今後の展望と日本市場への影響
本合意が実現すれば、日本企業が持つIPの海外展開における新たなビジネスモデルの先例となることは間違いない。特に、サウジアラビアのような潤沢な資金力を持つ国家ファンドと、フランスのような観光・文化的基盤を持つ国との連携は、今後も他の日本の人気IPで同様のプロジェクトが生まれる可能性を示唆している。
フランス政府とサウジ政府の思惑、そして日本のコンテンツパワーが交差するこの一大プロジェクト。その行方は、単なる一遊園地計画を超え、国際的なエンターテインメント投資の新たな潮流を占う試金石となるだろう。