FPSタイトルの公式キャスターとして活動しながら、かつて株式会社ポケモンで6年間勤務していたという異色の経歴を持つ筆者が、自身を「ポケモンバトル=ダブルバトル」にのめり込ませた理由を赤裸々に語る。ゲームボーイ版『ポケットモンスター 赤・緑』が発売された1996年当時、筆者は高校3年生。ポケモンブームとは無縁のままプレイステーションに夢中だったが、後に仕事で携わったWebサイト制作が運命の分岐点となった。
株式会社ポケモンに入社したのは2012年。最初の3年間はプロモーション部門でWebサイトやTV番組を担当し、後半の3年間は『ポケモンカードゲーム』の営業を務めた。そんな中、担当業務の一環として世界大会へと続く国内大会のプロモーションを手掛けることになる。この大会のレギュレーションがダブルバトルだったため、「理解しなければならない」という義務感から、当時の後輩に基礎を叩き込まれ、気がつけば夢中になっていたという。
シングルバトル全盛の時代に、なぜダブルバトルなのか
現在、ポケモンバトルの人気フォーマットはシングルバトルだ。もこう氏やライバロリ氏といった人気ストリーマーの多くもシングルバトルをプレイしており、ゲーム本編のストーリーでもダブルバトルは基本的にはオプション的な存在に留まっている。しかし、筆者は「ポケモンバトル=ダブルバトル」という独自の認識を持っている。対人戦ならではの緊張感と、2体同時に行動するからこそ生まれる戦略の奥深さが、将棋や麻雀に通じる楽しさだったと振り返る。
ダブルバトルとは?— 基本と魅力を解説
ダブルバトルとは、プレイヤーが同時に2体のポケモンを場に繰り出し、相手の2体と対戦する形式だ。シングルバトルとの最大の違いは、ポケモン同士の「協力」と「連携」が勝敗を分ける点にある。単純に「強い技を持つ」「HPが高い」といった個々のスペックだけでは選ばれず、味方をサポートできる特性や技が極めて重要になる。例えば、特性「あめふらし」で天候を雨に変え、隣のポケモンの水技を強化するペリッパーや、特性「いかく」で相手2体の攻撃を同時に下げ、技「ねこだまし」で行動を封じるガオガエンなどが好例だ。この「2体の組み合わせによる無限の可能性」こそが、ダブルバトルの最大の魅力と言える。
筆者が愛してやまない4匹の相棒とその戦術
長年のダブルバトル経験を持つ筆者が、特に愛着を持って使い続けているポケモンが4匹いる。それぞれが持つ特性や技が、ダブルバトルというフィールドでいかに輝くかを紹介する。
ガブリアス:王道のエース、2体同時攻撃が強力
ダブルバトルにおいて重宝されるのは、相手2体を同時に攻撃できる技の存在だ。ガブリアスはドラゴンタイプ屈指の素早さに加え、「じしん」と「いわなだれ」という2つの全体技を持つ。困った時にこの2つを選んでおけば、相手に十分な脅威を与えられる。ただし、「じしん」は味方にもダメージが入るため、相方のポケモン選びが重要になる。
ペリッパー:天候を操り、コンボを決める起点
特性「あめふらし」により、登場と同時に天候を雨に変えるペリッパー。シングルバトルでは天候を変えた後に交代するのが一般的だが、ダブルバトルでは登場したそのターンに隣のポケモンが水技を叩き込む、即席コンボが可能だ。これにより、相手の戦略を一瞬で崩せるのがたまらないという。さらに、ペリッパーは地面から浮いているため、ガブリアスの「じしん」を受けない。この相性の良さから、筆者はこの2体をセットで使うことが多かった。
ガオガエン:ダブルバトルにおける「妨害」のプロ
御三家ポケモンの一匹であり、筆者が在籍時にプロモーションを担当した『サン・ムーン』から登場したガオガエン。特性「いかく」で相手2体の攻撃を下げ、専用技「DDラリアット」も強力だが、何より注目すべきは技「ねこだまし」だ。これは登場したターンに限り使える先制技で、相手を1ターン行動不能にする。ダブルバトルでは、この1ターンのアドバンテージが試合の流れを大きく左右する。この「ねこだまし」を防ぐために、相手は「まもる」を選択するなど、心理戦が非常に重要になる。
ゲッコウガ:永遠に追い求める、可能性の塊
『X・Y』の御三家で、特性「へんげんじざい」を持つゲッコウガ。この特性は、自身が使う技と同じタイプに変化するというものだ。例えば「くさむすび」を使えばくさタイプになり、相手の攻撃を半減できる可能性がある。しかし、その運用は非常に難しく、「会心の一撃」を決められた場面は未だに多くないと筆者は語る。だからこそ使い続けてしまう、いわば「永遠に振り向いてくれない好きな女の子のような存在」だという。
ダブルバトルの奥深さを示した伝説のパチリス
ダブルバトルの面白さを象徴するエピソードとして、筆者は2014年の世界大会を挙げる。この大会で優勝したセジュン選手は、一見すると頼りなさそうなパチリスをチームに組み込み、ガブリアスといった猛々しいポケモンを相手に大活躍させた。この出来事は、スペックだけでは測れない「組み合わせの妙」が勝敗を分けるダブルバトルの本質を如実に示している。
『Pokémon Champions』でさらに広がる可能性
2025年4月にリリースされた『Pokémon Champions』は、これまで育成のハードルが高かったポケモンバトルを、より手軽に楽しめる環境をもたらした。新たにバトルに挑戦するプレイヤーが増えることを、いちファンとして心から嬉しく思う。ポケモンというコンテンツの凄さは、バトルだけでなく、『ポケモンユナイト』や『ポケモンGO』、『ポケモンスリープ』など、人それぞれに楽しみ方がある懐の深さにある。
在籍当時、石原CEOが語っていた「現実世界と仮想世界の両方を豊かにする」という理念が、着実に実を結んでいる。筆者はこれからもダブルバトルを続けながら、ポケモンという巨大な世界と繋がっていきたいと語り、2027年発売予定の最新作『ポケットモンスター ウインド・ウェーブ』への期待を込めて記事を締めくくっている。