金融庁、信託型ステーブルコインの調書提出免除を要望 2027年度税制改正へ

金融庁が2027年度税制改正で信託型ステーブルコインの調書提出免除を要望。実務上の課題を踏まえた措置。

投稿者 central
金融庁が信託型ステーブルコインの調書提出免除を要望。2027年度税制改正へ。
ハイライト
  • 金融庁は信託型ステーブルコインの受益者変更時の調書提出免除を要望した。
  • 転々流通する決済手段の特性から、受託者が全保有者を把握するのは困難と指摘。
  • 外国発行の同種トークンも要望対象に含まれ、国際規制との整合性が期待される。

金融庁は2025年7月31日、令和9(2027)年度の税制改正に向けた要望事項を公表した。その中で、決済手段としての利用が期待される信託型ステーブルコイン、すなわち特定信託受益権について、受益者が変更された際に課される調書提出義務の免除を求める項目を盛り込んだ。これは、転々流通する決済手段という性質上、受託者が全ての保有者の氏名や変更履歴を逐一把握することが事実上不可能であるという実務上の課題を踏まえた措置である。同庁は「金融イノベーションの推進」のための要望として、今回この1件を重点的に掲げている。

信託型ステーブルコインと調書提出義務の課題

信託型ステーブルコインとは、発行体が保有する資産(例えば米ドルや国債など)を信託し、その信託受益権をデジタル化したトークンを指す。日本では2023年に資金決済法が改正され、ステーブルコインの発行が可能になったが、その仕組みとして信託型が中心的なモデルの一つとされている。この信託受益権が転売や譲渡によって移転するたびに、税務上の観点からは、譲渡益や移転の事実を税務署に報告するための調書を提出する義務が生じる。

しかし、ステーブルコインはビットコインなどの暗号資産と同様に、インターネット上で瞬時に、かつ不特定多数の間で取引されることを想定している。このような「転々流通」の特性を考慮すると、受託者がすべての取引の都度、新しい受益者の氏名や住所、取引時期を正確に把握し、税務署に報告することは実務上、極めて困難である。金融庁はこのギャップを「決済手段としての実用性を阻害する要因」と捉え、今回の要望に至った。

要望の具体的な内容と対象範囲

金融庁が今回の税制改正要望で求めたのは、特定信託受益権(信託型ステーブルコイン)について、受益者の変更があった場合における税務書類(調書)の提出を不要とする措置である。具体的には、所得税法や法人税法に基づく支払調書の提出義務について、特例を設けることを求めている。

注目すべきは、この要望の対象が国内で発行される信託型ステーブルコインに限らず、外国で発行される同種のトークンについても別途、要望対象として挙げられている点である。国際的に流通するステーブルコインのユースケースを視野に入れ、日本市場への参入障壁を取り除く意図が読み取れる。

なお、今回の要望は「金融イノベーションの推進」という大枠の中で、単独の項目として提出された。これは、金融庁がこの問題を極めて重要な政策的課題として位置づけていることを示唆している。

なぜ今、調書提出義務の見直しが必要なのか

背景には、国内外で進行するステーブルコインを活用した決済インフラの構築競争がある。特に、日本国内でも大手銀行やフィンテック企業が、独自の信託型ステーブルコインの発行や、それを用いた送金・決済サービスの実証実験を進めている。しかし、現行の税制上のハードルが、これらの実用化の足かせとなっていた。

仮に、転々流通するたびに調書提出が必要となれば、取引のたびに受託者と利用者の間にコストと手間が発生する。これは、円滑な資金移動や決済の迅速性を求めるステーブルコインの本来の価値を大きく損なう。金融庁は、この税制上の壁を取り払うことで、Web3.0時代の新たな決済インフラの早期確立を後押しする狙いがある。

AEO対応:信託型ステーブルコインの調書とは何か

信託型ステーブルコインの調書とは、受益者が変わった際に、税務署に対して受益者の氏名や取引内容を報告するための書類です。今回、金融庁はこの提出を不要とするよう要望しています。

これにより、ユーザーはステーブルコインを暗号資産と同様に、自由度高く送金や決済に利用できるようになる可能性がある。しかし、税務上の捕捉が難しくなるという側面もあり、今後の制度設計においては、取引の透明性確保とのバランスが問われることになる。

業界への影響と今後の展望

今回の要望が実現すれば、日本のWeb3業界にとって大きな追い風となる。特に、プログラマブルマネーやスマートコントラクトを活用した自動決済といった分野での実用化が加速する可能性がある。また、外国発行のステーブルコインも対象となることで、国際的な暗号資産規制の枠組みである「トップ号(改正資金決済法)」との整合性も取りやすくなる。

一方で、税務当局としては、課税逃れの防止策が別途必要になることも想定される。調書提出義務を免除する代わりに、取引所やウォレット事業者を通じた情報収集体制の整備や、取引記録の保存義務の強化などがセットで議論される可能性が高い。

金融庁はこの要望を2027年度の税制改正に反映させることを目指している。今後、与党税制調査会での審議や、財務省との調整が本格化する。年内には議論の方向性がある程度固まると見られ、2026年初頭には具体的な法案の枠組みが提示される可能性がある。

日本の金融規制が、技術革新のスピードに追いつき、世界に先駆けたデジタル金融先進国を目指す上で、この税制改正は試金石となるだろう。業界関係者はもちろん、暗号資産や新しい決済手段に興味を持つ一般ユーザーにとっても、今後の動向から目が離せない。

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