大林組、PwCの新環境評価サービスを先行導入、建設SX実現へ

大林組がPwC Japanグループの新たな環境評価サービスを建設現場に先行導入し、サステナビリティ変革を加速させます。

投稿者 central
大林組がPwCの新環境評価サービスを建築時に先行導入し、建設SXをリードします。
ハイライト
  • 大林組はPwC Japanグループの新環境評価サービスを建設SXに向け先行導入しました。
  • 同サービスは気候変動や生物多様性などを統合評価するホリスティックアプローチを採用しています。
  • 建設業界全体への波及効果が期待され、今後の標準化が注目されています。

大林組は、PwC Japanグループが2026年1月にリリースする予定の新たな環境評価サービスを、建築時の環境パフォーマンス評価において先行導入したことを明らかにした。気候変動対策だけでなく、生物多様性や水資源、資源循環など、複数の社会課題を統合的に評価する「ホリスティックアプローチ」と呼ばれる手法を採用した点が最大の特徴であり、建設業界におけるサステナビリティ変革(SX)の本格的な加速につながる取り組みとして注目される。

単一指標では捉えきれない「複雑化する社会課題」への対応

企業経営において、経済価値の追求と並んで環境配慮や社会課題への対応が不可欠であるとの認識は、今やグローバルスタンダードとなっている。しかし、気候変動やカーボンニュートラルといった単一のテーマにのみ焦点を当てた従来型の評価手法では、相互に複雑に絡み合う現代の社会課題を正確に測定し、適切な経営判断に結びつけることが難しいという課題が指摘されてきた。

例えば、CO₂排出量の削減だけを追求した結果、水資源の過剰消費や地域生態系への悪影響を招いてしまうといったトレードオフの発生は、その典型的な例である。このような問題意識を背景に、環境や社会へのインパクトを個別ではなく「全体最適」の視点で捉え直す動きが、国際的なサステナビリティ基準の策定やESG投資の高度化と歩調を合わせる形で急速に広がっている。

そうした中で注目を集めているのが、環境・社会・経済の各側面を相互に関連づけながら統合的に評価する「ホリスティックアプローチ」だ。この考え方を実装したのが、PwC Japanグループが開発し、2026年1月より提供を開始する新たな環境評価サービスである。同サービスは、複数の環境指標を重層的に分析し、企業活動がもたらすポジティブおよびネガティブなインパクトを総合的に可視化することを目的としている。

「ホリスティックアプローチ」とは何か——PwCが目指す評価の枠組み

PwC Japanグループが今回リリースする環境評価サービスは、従来の環境アセスメントやカーボンフットプリント算出とは一線を画す。具体的には、気候変動、水資源、生物多様性、資源循環、大気汚染、土地利用など、複数の環境テーマを同時に評価対象とし、それぞれのテーマ間の関係性を考慮した上で総合スコアを算出する仕組みを採用している。

このアプローチの核心にあるのは、「1つの問題を解決しようとした結果、別の領域で新たな課題を生み出していないか」という視点である。企業が真の意味でサステナブルな経営を実現するためには、部分最適ではなく全体最適を目指す必要があるという問題意識に基づいている。PwCは、この評価フレームワークを通じて、企業が自社の環境インパクトを多角的に把握し、戦略的なSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を推進するための意思決定を支援する方針だ。

大林組の先行導入——建設現場における環境評価の新たな試み

大林組は、PwCの新評価サービスの先行利用企業として、実際の建築プロジェクトにおける環境評価に同サービスを適用した。大手ゼネコンである大林組が、着工前の環境アセスメントや施工段階での環境負荷評価にホリスティックな視点を取り入れたことは、建設業界全体にとって象徴的な意味を持つ。

建設業は、鉄鋼やコンクリートなどの資材製造に伴うCO₂排出、建設廃棄物の発生、騒音や振動による周辺環境への影響、さらには生態系の分断や景観へのインパクトなど、多岐にわたる環境負荷を抱える業種である。従来はこれらの項目を個別に管理することが一般的だったが、大林組は今回の先行導入を通じて、それらを一元的かつ相互関連的に評価する枠組みを実務レベルで試行することになる。

同社が今回の取り組みで得た知見は、サービス本体の改良にもフィードバックされる見通しであり、PwC Japanグループは2026年1月の正式リリースに向けて、実証データに基づく評価モデルの精度向上を図るものとみられる。

SX実現に向けた建設業界の現在地

建設業界を取り巻くサステナビリティ要件は年々厳しさを増している。国土交通省が掲げる「グリーン社会の実現に向けた建設分野の取組」や、東京都の「環境確保条例」に基づく建築物環境計画書制度など、国内規制の強化に加え、海外の投資家やテナントからは、より高度な環境情報の開示が求められるようになっている。

こうした流れの中で、大林組がPwCの新サービスを先行導入した背景には、単なるコンプライアンス対応を超えた、競争力の源泉としてのサステナビリティ経営の確立という戦略があると考えられる。同社はこれまでも、カーボンニュートラル達成に向けたロードマップの策定や、環境配慮型建材の開発、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進などに積極的に取り組んできた。今回のホリスティックな環境評価の導入は、これらの個別施策を統合的にマネジメントするための基盤として位置づけることができる。

市場への影響と今後の展望

PwC Japanグループによる新環境評価サービスの投入は、建設業に限らず、製造業や不動産デベロッパー、インフラ運営企業など、幅広いセクターに波及する可能性がある。特に、サプライチェーン全体での環境負荷の可視化が求められる現在、複数の環境項目を統合的に評価できる手法へのニーズは今後ますます高まると予想される。

一方で、ホリスティックアプローチの普及にはいくつかのハードルも存在する。評価指標が多岐にわたることで、データ収集の負荷が増大する点や、テーマ間のトレードオフの定量化手法がまだ発展途上である点などが指摘されている。PwCは、こうした課題に対して、デジタル技術を活用したデータ収集の効率化や、業界横断的なベンチマークデータベースの構築などを通じて解決を目指すとみられる。

大林組とPwC Japanグループの今回の取り組みは、建設SXの実現に向けた一つの具体解を示すものであり、今後の業界全体の動向を占う上でも重要な意味を持つ。両社が今後どのような形でこの連携を深化させ、評価手法の標準化や業界全体への展開につなげていくのか、引き続き注目が集まる。

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