川崎重工業がドイツ・ケルンで開催された世界最大のゲーム見本市「gamescom 2026a」に、現在開発中の四足歩行ロボット「CORLEO(コルレオ)」の搭乗可能なモックアップを参考出展した。同機は過去に大阪・関西万博などでコンセプトモデルが紹介されてきたが、実際に人がまたがれる形での公開は今回が初めて。2030年のサウジアラビア・リヤド万博での採用を目指し、2035年までの実用化を目標に掲げる。
gamescomで異彩を放った「金属の獣」
川崎重工ブースに設置されたCORLEOは、獣を思わせるしなやかなシルエットと金属製のボディが特徴だ。車輪を持たず四足で歩行し、手元のモニターには地形データが表示される。その圧倒的な存在感に、ブースには次々とゲーマーが集まり、コスプレイヤーがまたがるとまるでゲームの世界から飛び出してきたかのような光景が広がった。ゲーマーの目には「Horizon」シリーズの機械獣や「メタルギアライジング」のブレードウルフ、「Overwatch」のメック、「ファイナルファンタジーXIV」のフェンリルなど、さまざまなゲーム内ビークルが重なる。現実のロボットがついにゲームの想像力に追いつきつつあることを実感させる出展だった。
シミュレーター遅延が生んだ“幸運”な展示
実は川崎重工は当初、このCORLEOの実機モックではなく、専用のライディングシミュレーターをgamescomに出展する予定だった。しかし開発が遅れたため、現時点で最も完成度の高い搭乗可能なモックを持ち込んだという。結果的に、ゲーマーが直接触れられる貴重な機会となり、会場の注目を集めることになった。シミュレーターの公開は2027年に延期されたが、その内容は極めて野心的だ。ヘッドセットを装着してCORLEOに乗り、バーチャルテストコースを走行できるもので、二つの目的を持つ。一つは実際のCORLEOの乗り味を磨くための開発ツールとしての役割。もう一つは、このシミュレーター自体をeスポーツの競技種目に育て上げる構想である。
水素エンジン搭載、全地形対応の次世代モビリティ
CORLEOの技術的詳細も明らかになった。ボディには吸気口が設けられ、その奥には333ccの水素エンジンが搭載される。発電用エンジンとして機能し、各部のアクチュエーターや制御システムに電力を供給する。脚部はラバー素材のひづめを持ち、凹凸を吸収しながら草原や岩場を歩行できる。サスペンションは歩行だけでなく、走行や跳躍も可能にする設計だ。また、手綱とあぶみは乗り手の重心移動を検知し、直感的な操作を実現する。コクピットは広々としており、2人乗りも可能。モニターは独自のナビゲーションシステムを搭載し、安全ルートを提案する。
2030年リヤド万博が試金石に
川崎重工はCORLEOの実用化に向け、複数のマイルストーンを設定している。まず2027年にライディングシミュレーターを公開。その後、2030年のリヤド万博で万博警備用の公式モビリティとして採用されることを目指す。同時に、シミュレーターのeスポーツ展開も同万博で狙う。万博後は、テーマパークやアウトドア施設での運用を想定。公道走行は想定しておらず、森や山といった自然環境での利用を主眼に置いている。つまり、CORLEOは「オフロードのパーソナルモビリティ」としてのポジションを明確にしている。
「ゲーム世界の延長」がもたらすワクワク感
実際に筆者もモックにまたがってみた。金属製の獣に乗る感覚は、既存の二輪車とも四輪車とも異なる。コクピットはクルマ並みの情報表示が可能な広さで、シートもゆったりしている。現時点では完全なモックアップであり、電源は入っていないため微動だにしないが、完成時にはバランスを取るメカニズムがしなやかに揺れを吸収するという。ゲーマーとしては、四肢の関節から金属音が響き、操作を促すメニュー音が鳴り、女性ボイスで話しかけてくる……そんな想像が無限に広がる。CORLEOは、現実の技術がゲームの夢を具現化する象徴的なプロジェクトだ。
CORLEOとは?―よくある質問と回答
川崎重工のCORLEO(コルレオ)とは、四足歩行型のパーソナルモビリティである。水素エンジンで発電し、全地形対応の脚部で歩行・走行・跳躍が可能。2030年リヤド万博での採用を目標に開発中で、2027年には専用ライディングシミュレーターが公開される。公道走行は想定せず、アウトドアやテーマパークでの利用を主眼としている。
次のステップは実機ではなく、まずライディングシミュレーターの完成だ。そのシミュレーターがどのようなコンテンツを持つのか、eスポーツとしてどの程度の競技性を備えるのか。川崎重工がゲーム業界と本気で連携する姿勢には、注目が集まる。今後も動向を追いかけたい。