経済産業省は2月17日、茨城県常陸大宮市に対し、原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場を選定するための文献調査の受け入れを正式に要請した。実現すれば、北海道の寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町、東京都小笠原村の南鳥島に次いで、全国で5カ所目の調査受入自治体となる。今回の要請は、自治体からの申し出がないまま国が調査を依頼する異例のケースとしては2例目となる。
経済産業省の幹部が同日、常陸大宮市役所を訪れ、鈴木定幸市長に文書を手渡した。鈴木市長は「大変前向きに受け止めている」と述べ、市議会の意見を聞いた上で最終判断を下す意向を示した。同市は栃木県と境を接する内陸部に位置するが、一部は太平洋岸から約20キロメートルの距離にあり、海上輸送の面でも適性があるとみなされている。
核のごみ最終処分場選定のプロセスと今回の要請の位置づけ
高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定は、大きく3段階の調査を経て進められる。第一段階が今回の要請の対象となる「文献調査」で、地質図や学術論文をもとに、火山や活断層の有無を約2年かけて机上で確認する。第二段階は「概要調査」、第三段階は「精密調査」と呼ばれ、それぞれ関係する都道府県知事や市町村長の同意が必要となる。全ての段階を経て最終処分場が決定されるまでには、着手から約20年の歳月が見込まれている。
今回の常陸大宮市への要請は、国が2017年に公表した「科学的特性マップ」に基づいている。このマップは、火山や活断層が近くにないなど、最終処分場の候補地として適した条件を備える地域を全国で示したものだ。常陸大宮市はこのマップに掲載されており、地質学的な安定性が評価された形だ。
鈴木市長の「前向き」な姿勢と今後の焦点
鈴木市長が今回の要請に対して「大変前向きに受け止めている」と発言したことは、今後の議論に大きな影響を与えるとみられる。これまで他の自治体では、調査の受け入れに住民の反対が強く、首長が難色を示すケースが少なくなかった。しかし、鈴木市長は早期に市議会での議論を経て結論を出す方針を示しており、政府にとっては追い風となる可能性がある。
一方で、高レベル放射性廃棄物の処分問題は、安全性の確保や将来世代への負担の観点から、長年にわたって議論が続く難しいテーマだ。文献調査の受け入れが直ちに最終処分場の建設につながるわけではないが、一度調査が始まれば、その後のプロセスが加速する可能性も否定できない。住民説明会や専門家による議論の場がどの程度設けられるのか、透明性の高いプロセスが求められる。
全国の動きと茨城県の事情
これまでに文献調査を受け入れている自治体は、北海道寿都町、同神恵内村、佐賀県玄海町、東京都南鳥島の4件。いずれも調査の進捗状況や住民の反応はさまざまだ。特に北海道の2町村では、調査の進展に伴い、住民の間で賛否が激しく分かれている。
常陸大宮市は、原子力発電所が立地する東海第二発電所(東海村)からも比較的近い位置にある。茨城県内には既に原子力関連施設が複数存在しており、同県がこれまでに原子力政策と密接に関わってきた経緯がある。このため、今回の要請は地元の原子力政策に対する認識にも影響を及ぼす可能性がある。
政府は、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定を国家的な課題として位置づけており、今後も科学的特性マップに基づき、全国の自治体に対して同様の要請を続ける方針とみられる。常陸大宮市の判断が、他の自治体への波及効果をもたらすかどうかも、注目されるポイントだ。