Partior、LSEG決済網と24時間送金提携へ

ブロックチェーン基盤の決済網がLSEG DiSHと提携し、国際送金の24時間化と効率化を実現します。

投稿者 central
ハイライト
  • PartiorはLSEG DiSHとの提携により、国際送金網に24時間稼働する決済銀行の流動性を導入します。
  • この提携は、包括信託口座を中核とし、決済プロセスの効率化と時間外送金の実現を目指します。
  • Partiorは2021年にJPモルガン、DBS銀行、テマセクの3社が共同設立したブロックチェーン技術を活用した決済網です。

ブロックチェーン基盤の銀行間決済網を運営するパーティア(Partiora)は17日、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)傘下の決済インフラ「LSEG DiSH」との提携を発表した。この提携により、国際送金網に24時間稼働する決済銀行の流動性が導入されることになる。パーティアは2021年にJPモルガン、DBS銀行、テマセクの3社が共同設立したブロックチェーン技術を活用した銀行間清算・決済網であり、JPモルガンは創業株主の一社として名を連ねている。今回の新たな枠組みでは、LSEG DiSHが提供する包括信託口座を中核としながら、決済プロセスの大幅な効率化と時間外送金の実現を目指す。

この動きは、国際決済の分野で進む構造変革の流れを象徴している。従来の銀行間送金は、営業時間や時差の制約に縛られ、即時決済が求められる現代のビジネス環境において大きなボトルネックとなっていた。パーティアのブロックチェーン技術を活用した基盤は、こうした制約を技術的に解消し、金融機関に対してより柔軟で透明性の高い決済手段を提供することを目的としている。</

パーティアの企業概要と事業の軌跡

パーティアは、2017年ごろから構想が始まったとされる分散型台帳技術(DLT)を応用した決済プラットフォームである。創業からわずか数年で、アジアの主要銀行や国際的な金融コングロマリットからの出資を相次いで獲得し、その技術力とビジネスモデルの確かさを証明してきた。特に、シンガポールを拠点に置き、アジア太平洋地域におけるデジタル決済のハブとしての成長を目指す戦略は、欧米のフィンテック企業とは一線を画すものとなっている。

同社の強みは、単なる送金システムの提供にとどまらない。銀行間で発生する複雑な債権債務関係を、スマートコントラクトによって自動化し、決済リスクを軽減する点にある。具体的には、貿易金融や国債決済など、証券取引と資金移動が同時に発生する分野において、その効果を最大限に発揮するとされている。これにより、決済完了までのタイムラグを短縮し、資金調達コストの削減にも寄与することが可能だ。

LSEG DiSHとの提携がもたらす決済革命

今回発表されたLSEG DiSHとの提携は、パーティアの戦略における重要な転換点となるだろう。LSEG DiSHは、ロンドン証券取引所グループが提供する決済インフラであり、その名が示す通り「デジタル資産のための即時決済ハブ(Digital Settlement Hub)」として機能する。この提携により、パーティアのネットワーク上で行われる取引は、LSEG DiSHが保有する包括信託口座内の流動性とダイレクトに連動し、いつでも即座に決済が完了する仕組みが構築される。

これにより、従来の銀行営業日に依存していた送金業務から完全に解放され、週末や祝日を問わない24時間365日の決済処理が可能となる。国際ビジネスに従事する企業にとって、資金の滞留期間が短縮され、キャッシュフローが大幅に改善されることは間違いない。また、決済データが銀行間で一元的に共有されることで、マネーロンダリング対策(AML)や不正取引の監視においても、従来のシステムよりも高い精度での対応が可能になる。

新基盤の実運用に向けた具体的なタイムライン

現在、パーティアの新基盤は、複数の有力銀行によるテスト環境での検証を経て、2027年の本格的な本番稼働を目指しているという。このスケジュールは、金融規制当局との対話や、システム全体の堅牢性を確認するための時間を考慮した現実的なスケジュールとして業界関係者の間では受け止められている。本番稼働までの期間には、セキュリティ監査や関係各社のシステム統合作業が順次行われる予定だ。

さらに、今回の発表に際しては、複数の欧州の銀行が新提携に参加する意思を示していることも明らかになっている。独大手銀行をはじめとする参加金融機関は、パーティアのネットワークを利用することで、海外送金にかかる手数料の大幅な値下げと、処理時間の短縮を同時に実現しようとしている。国際銀行間通信協会(SWIFT)のネットワークがデファクトスタンダードとして君臨する現状において、ブロックチェーン基盤の決済網がどこまでシェアを拡大できるかが、今後の金融業界の注目ポイントといえる。</

外貨決済の常識を覆す「常時稼働」の意味を解釈する

今回の提携の核心にある「常時稼働の流動性」とは、単に営業時間を延長するというレベルの話ではない。伝統的なコルレス銀行契約に基づく現在の国際送金は、送金銀行、中継銀行、受取銀行と取引が連鎖する間に、各銀行の保有する流動性のほとんどが「待機状態」にあることを前提に成り立っている。パーティアの新基盤は、この待機状態にある資金をデジタル資産として一箇所にプールし、必要に応じて即座に解放する「流動性の民主化」を実現するものである。

この仕組みの利点は、時間外決済が可能になることだけではない。むしろ、為替の変動リスクをヘッジするためのコストを大幅に削減できる点にある。企業が海外送金を行う際、日本時間の深夜と米国時間の日中では、為替レートに大きく差が生じることがある。パーティアのネットワーク上で常時決済が可能になれば、送金する側は最も有利なレートを選択する権利を手にすることになる。金融機関にとっても、往査(ゆきさつ)や日次照合にかかる人件費を削減できるという副次的な効果がある。

ブロックチェーン決済網を巡る競争環境と業界への影響

パーティアだけがこの分野で動いているわけではない。リップル(Ripple)やステラ(Stellar)といった暗号資産を基盤とする決済ネットワーク、あるいは日本のJCBなどが進める「DCJPY(デジタル通貨決済プラットフォーム)」など、国境を越えた送金網の座を巡る競争は年々激化している。その中でパーティアが一歩先んじていると評価される点は、新興のフィンテック企業ではなく、JPモルガンやDBS銀行といった伝統的な巨大金融機関が旗振り役として参画している事実である。

金融庁や日本銀行など世界各国の中央銀行も、こうした民間主導のブロックチェーン決済網の動向を注視している。中央銀行が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)との相互運用性を確保する動きが今後進むと予想されるが、パーティアのプラットフォームは中央銀行系のシステムと比較して、既に実務的な通貨の裏付けを持つという点で優位性を持つ。

現在の銀行間システムとの違い

従来の銀行間決済システムは、国営または民間の決済機関が中央集権的に処理するのが一般的である。一方でパーティアは、複数の銀行がネットワークに参加し、それぞれが取引履歴を共有する「許可型ブロックチェーン」を採用している。これにより、パブリック型ブロックチェーンにありがちな取引速度の遅さや、承認に伴う膨大な電力消費の問題を克服している。また、システムの管理者が明確であるため、金融規制の枠組みの外で通貨取引を行おうとするマネーロンダリング(資金洗浄)対策にも有効だとされている。

現在の国際送金で広く利用されるSWIFTが「メッセージの伝達」であるのに対し、パーティアは「決済そのもの」をコード上で完結させる。この設計思想の違いが、最終的な決済リスクの軽減につながっている。具体的には、送金指示を出した銀行が破綻した場合、従来のシステムでは送金者にリスクが跳ね返るケースがあるが、パーティアの基盤では送金指示と同時に資金が拘束されるため、こうした当事者間の信用リスクが大幅に軽減される。

金融機関と企業が受けられる具体的な恩恵とは

輸出企業や海外に拠点を持つ事業会社にとって、今回の提携は資金運用の選択肢を広げるものである。これまで一定のリスクを許容して外貨預金で待機せざるを得なかった資金も、パーティアのネットワーク上に待機させることで、流動性を確保しながらも即座にビジネスに活用できる。具体的には、月末の決算作業や売上金の回収プロセスが劇的に効率化されることが期待される。

今後の実務上の焦点は、どのように各社の既存ERPシステム(基幹業務システム)と連携させるかである。パーティアのネットワークはアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を公開しており、会計ソフトや販売管理システムと直接連動させることが可能だ。これにより、入出金の記録入力という煩雑な業務から、経理担当者が解放される日も遠くないかもしれない。

今回の発表は、国際金融のインフラが確実に次なるフェーズへと移行していることを示す一つのエポックメイキングな出来事である。2027年の本番稼働に向けて、パーティアがどのような規制対応や流動性の確保戦略を打ち出すのか、そして大手金融機関がどこまで実務を移行させるのか、今後も目が離せない。

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